渚にて

旅行、音楽、読書、日常の雑記をつれづれに。

読書のはなし

ペソアの憂鬱をかみしめて

EUフィルムデーズでポルトガル映画の上映があった。 その日の後半のトークには、この春に日本翻訳大賞に選ばれた『ガルヴェイアスの犬』(ジョゼ・ルイス・ペイショット)の翻訳家、木下眞穂さんもいらっしゃるということで、観に行くことにした。 上映作品…

初夏だけど/春にして君を離れ

長野から松本へ向かう特急ワイドビューしなのに乗っていた時のことだった。 お昼は松本で食べようとぼんやり考えていて、あと30分も経たずに到着というところで、突然電車が停まった。どうやら前方の駅で起きた事故の影響らしい。再開の目処はなかなか立た…

本から生まれるユートピア

この前、高校時代の図書室の司書さんに久しぶりに会った。私の大学入試後にご飯をおごってもらって以来だったので、彼女に気づいた時に私のことを覚えているだろうかとちょっと心配だったけれど、顔を見るなりがっしりとハグされた。高校入学後に初めて図書…

ひと月の夏/この広い空の下で

■ひと月の夏(A Month In the Country)(英・1987)1920年の夏、イングランド・ヨークシャーの田舎町にひとりの若者が降り立つ。若者バーキン(コリン・ファース)は、村の教会に描かれた中世の壁画の修復を任されていた。しかし彼は第一次世界大戦のパッ…

片道切符の時間旅行/『クロノス・ジョウンターの伝説』

お疲れ様を自分に言いつつ、冬から春先まで読んだ本を振り返ってみたくなった。それというのも、長いことお世話になっているペンフレンドの啓さんから手紙が来て、「Twitterで上げてた本を読みましたよ」と言われたのが嬉しかったから。私がTwitterのTL Book…

Sin Fang/Flowers、アーナルデュル・インドリダソン『湿地』

だんだんとRhyeの音が似合う季節になってきた。イチョウの葉がだんだんと黄色くなって、雨で道に落ちているのを見ると、もう厚着をしてもおかしくないかな、と少し安心する。寒がりの私は外に出る前に不安すぎて、思わず重ね着をしすぎてしまい、途中でへば…

ブラッドベリ『霧笛』舞台を見る

先日の夜、海の家で行われたブラッドベリ原作『霧笛』の舞台を見てきた。役者二人だけの芝居に生の音楽がつくという仕掛けで、夏が終わって普段は閉鎖されている海の家の二階がステージとして使われていた。知人と一緒に階段を上がると二階の真ん中に出た。…

本をよむなら今だ

本をよむなら今だ。新しい頁をきりはなつとき 紙の花粉は匂い立つ。外の賑やかな新緑まで ペエジに閉じ込められてゐるやうだ。本は美しい親愛をもって私を囲んでいる。室生犀星『本』ジーヴスの漫画も描いている勝田文さんの、昭和日本に舞台を移した『あし…

イギリス妄想旅行を開始する

今日上司に見せた仕事は「面白い。大したもんだ」と言ってもらえてすごく嬉しかった。お世辞にもそんな大きいものじゃないんだけど、そういう言葉を面と向かって言ってくれる人にこれまであまり会ったことがなかったから。私も「これは楽しいぞ」と思って、…

連休に東の都/『ソフィ カル 最後のとき/最初のとき』展

ソフィ カルの名を最初に知ったのは、アメリカの現代小説家ポール・オースターからだった。高校生くらいの頃、新聞の書評を見て、ふと手にした本『リヴァイアサン』。今はもうあまり読まなくなってしまったけれど、その中に彼女をモデルにした女性が登場する…

漂泊と彷徨の果て/思い出しメモ

あれこれあって、毎日があっという間に過ぎて行って、忙しくなる前に思い出しておこう。私の気になるもの。“I haven't got any special religion this morning. My God is the God of Walkers. If you walk hard enough, you probably don't need any other …

神童コンプレックス/フラニーとゾーイー

ツィッターでは時々呟いてるのだが、川上さんの関西版『フラニーとゾーイー』を目にしてから、あらためて原作のサリンジャーを読んでいる。偶然にも古本屋で買って本棚の奥に突っ込んでいたのがあったので、しばらくぶりに。たぶん昔、『フラニー』までは読…

特捜部Q/冬の北欧ミステリ

銀背にはまって以降すっかりハヤカワづいている。寒い季節だし家に閉じこもってミステリでも読もうと手にしたエッシ・エーズラ・オールスンの『特捜部Q』が面白くて、ほかの本もそっちのけで思わず読みふけってしまった。おかげで相変わらず寝る時間が鬼の…

ブラックアウト/戦争の最中へ

少し前にここでも紹介したコニー・ウィリスの『ブラックアウト』、ようやく読み終えました…。最近はあまり読書もしなくなっていたのですが、冬が迫り風呂に持ち込んで深夜に読んでいると「こんなに面白い本があったのか!!」とわくわくが止まらず、毎晩早朝…

豊田徹也/ゴーグル

この10年余、『アンダーカレント』『珈琲時間』という傑作を描き上げながら、それ以外の音沙汰がなかったファン泣かせの漫画家、豊田徹也の最新短編集を本屋で見かけたので、勢いよくレジに駆け込みました。 豊田徹也『ゴーグル』帯にも「在庫一掃大放出!…

トムとエリオット/夢のパンジャンドラム

トムヒのつぶやきってたまに難解すぎると思っているんですが、皆さんはいかがでしょう。 今日はいきなりこれでした、 "And indeed there will be time For the yellow smoke that slides along the street Rubbing its back upon the window panes...."シェ…