渚にて

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ブラックアウト/戦争の最中へ

少し前にここでも紹介したコニー・ウィリスの『ブラックアウト』、ようやく読み終えました…。
最近はあまり読書もしなくなっていたのですが、冬が迫り風呂に持ち込んで深夜に読んでいると「こんなに面白い本があったのか!!」とわくわくが止まらず、毎晩早朝を迎えるまで読み進め、最終的には就寝時間が朝5時になってしまうほどでした。

あらためて内容を紹介すると、2060年のオックスフォードから、史学生3人が第二次世界大戦中のイギリスへ現地調査のためにタイムトラベルするという話です。



 

中心となる学生は、ポリー・チャーチル(ポリー・セバスチャン)、メロピー・ウォード(アイリーン・オライリー)、マイクル・デイヴィース(マイク・デイヴィス)の3人。
かっこ内の名前は過去世界で現地調査をする際の偽名ですが、話はほぼ第二次世界大戦下で展開するため、そちらの名前での方が人物を把握しやすいかも。タイムトラベルなのでSFではあるのですが、むしろ歴史ものとして読めるのではないでしょうか。しかしここでフォーカスが置かれているのは、疎開、戦時の列車、防空壕の中の様子などあくまで「庶民の歴史」です。

ポリーはデパートの売り子としてロンドン大空襲下の灯火管制(ブラックアウト)された市民の生活を、アイリーンはメイドになって疎開児童の様子を、そしてマイクはダンケルク撤退時の民間人の英雄を探すためにそれぞれ過去へと向かいます。
ロンドン大空襲やダンケルクは、タイムトラベラーが関わると歴史を変えかねない決定的な「分岐点」となるため、担当教授のダンワージーは難色を示していたものの、何とか調査を決行。しかしその直前で何故か彼らのスケジュールは少しずつ変更されてしまいます。現地でも次々と予想外のトラブルに見舞われていく3人。迫りくるナチスの影と分岐点…果たして彼らは無事に調査を終えることができるのか?

これは著者コニー・ウィリスの8年がかりの超大作で、本書は物語の前半に過ぎません。後半に当たる『オール・クリア』の翻訳は、来年春先に出版される模様…(涙)。こんなに続きが気になる話は久しぶりだよ!!
戦争については私は興味はあるものの、世界史専攻などしたことがないため知識に乏しく、「ダンケルクが気になるなー」と呟いていたら、ありがたくも「こんなのがあるよ」と情報を頂きました。
BBC制作のドキュメンタリードラマ『ダンケルク撤退』です。

Dunkirk "Retreat" Part 1/6


ダンケルク撤退とは1940年5月、ドイツが勢力を増す中、『ダイナモ作戦』というコードネームのもとに、フランスのダンケルクに取り残されたイギリス軍、フランス軍を、総力を挙げて船で運び撤退させた連合軍の大規模作戦です。この作戦は輸送船のほか駆逐艦や民間船などが参加し、わずか9日間のうちに33万8千人もの兵士がイギリスへと運ばれました。

コニー・ウィリスは冒頭の謝辞で、帝国戦争博物館取材時に出会った婦人の一団を挙げています。彼女たちは大空襲の間、救出作業員や監視員などをしていたそうで、この作品を書く上で大きな助けとなったそう。実際に体験した人たちの話ほど興味深く、面白いものはないということかな。
それにしても今のイスラエルとガザの情勢を見ていると、時代は変わっても変わらない状況ってあるな…と複雑な気持ちになります。

早く出てくれオールクリア翻訳。自分の歴史の知識を鑑みるにとても原書で追える気がしない。いやでもほんっとうに続きが気になるなあ。欲しいな。