渚にて

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ポルトガル、きみを愛してる!1 知識ゼロからの旅(Lisboa)

思いつく限りの衝動でここ数年行きたい場所へ何とかかんとか行ってみたが、今年ほどどこに行ったらいいか分からない年はなかった。
どうしよう。でもどこかに行きたい。
仕方がないので、思いつかないなりにこれまでの旅を振り返ってみた。
北欧はよかった、でも天気がいつも曇りで雨と風だった。いくら雨女でも、せめて夏くらいは日差しを浴びてみたい。
それから北は、物価が高すぎる。その割にごはんが微妙だ。
去年アイスランドで1800円もする(これでも安い方だ)砂糖を大量にぶっかけられたタイヌードルを食べた日には、「最終日のごはんがこれか…」とじゃりじゃり音がする麺を噛みしめながら泣きたくなった。
うん、ご飯がおいしい国がいい。物価もそこそこ。天気もあんまり悪くなくて。あと、あまり行ったことのない場所。
そんな何とも言えない消去法で、選んだのがポルトガルだった。



そもそも、ポルトガルとは一体どんな国なのか?


あまりに知識がなさすぎて、ホテルを予約する前からエンリケ航海王子について調べていた(そこからかよ)
知っている人は案外と少ない。
世界遺産だらけの情熱の国スペインの隣にあるせいか、ヨーロッパの大航海時代を切り開いた海洋国家の割に異様に影が薄い。実際、ガイドブックも少ない。
友人からは「え、ポルトガルってご飯美味しいの??」と言われ(あのスペインの隣だよ!?)、「サッカー目当てじゃないの?」(確かにそれが一番有名だ)とも言われた。
それにしたって、えーと、有名なのってフェルナンド・トーレスだっけ?
違う、彼はスペイン人だ。そうだクリスティアーノ・ロナウドフィーゴ!!それ以外知らないぞ。
インド航路を発見したヴァスコ・ダ・ガマが恐らくもっとも知られている人物だろうが、それすらコロンブスとごっちゃになったり、「世界一周した人だっけ?」と思ったりしてしまう始末だ。
日本人が最初に会ったヨーロッパ人はポルトガル人にも関わらず、その後の鎖国によってオランダの方が印象が強い。
つまり、全然分からない。これは面白いのではないか。下手な知識がある場所より、思い入れがあまりない場所の方が新鮮だ。
そんなわけで6月のある日、一路リスボンへと向かった。


■20,Jun,2015(1日目・リスボン

朝の便で成田を発ち、9時間後にオランダ・スキポール空港で乗り換える。
スキポールから2、3時間ほどでリスボンに到着。
着いたのは午後7時過ぎ。空はまだ昼のように明るかった。

空港の到着ゲートのある階にある出口のタクシーは全てぼったくりだと聞いていたので、重たい荷物を引きずって上の階へと移動する。タクシーがずらりと並んでいるが、運転手さんにあんまり英語が通じない。とりあえず地図を見せると、運転手のおっちゃんはすぐに合点がいったようだった。

さてタクシーだが、メーターががんがん上がる。10メートルくらいでひょいと上がる。どういう仕組みなんだろう。何がぼったくりで何がスタンダードなのかが分からず、すっごく不安になる。
途中で思わず「こんなにメーターって上がるものなの?」と突っ込んだら、おっちゃんが車を止めて何か言ってきた。うわー全然わからん。困った。でも引けない。
何だかんだで街の中心部・バイシャにあるホテルの前まで着くと、今度は私が大きいお金しかなく(最低だ)、おっちゃんがホテルの受付のお姉さんを呼んで小さいお金に両替してくれた。
料金はガイドブックでみたとおりの標準価格だったので、おっちゃんを疑って悪かったなと少し後悔した。
(ああ、しょっぱなからこんなんでやっていけるのだろうか…)
いつも通り不安にまみれてホテルのベッドでゴロゴロと転がりうめいていると、窓の外には向かいの空き家のアズレージョ(飾りタイル)の壁が見える。
リスボン
着いちゃった。

前日は忙しかったのであまり寝れていないが、もったいないので街をぶらぶらとした。
「坂が多い」とは聞いていたものの、まさか街中にここまで突然に急な坂があるとは思ってもいなかった。

バイシャの隣の地区のシアードは、標高が30メートルほど高い。
標高が低い側のホテルにしてよかった。こんな長い階段、スーツケースなんて大荷物を抱えて登れるわけがない。
ともあれ、ポルトガルの夕食の時間は大体8時からと遅く、街の中心だけにレストランもたくさんあって、食べる場所には困らなそうだった。
疲れていたので坂の上に行くのは翌日にして、通り沿いの観光客向けのレストランの呼び込みに乗った。

バイシャ・シアードの駅の近く。階段上がシアード地区だが、坂はさらに続く

観光客向けのレストランで、タラとじゃがいものグリルを食べる

初日の晩ごはんはまあまあといったところ。観光客向けならこんな感じだろう。
問題はクレジットカードが使えなかったことだ。
最近はカードが使えて当たり前の国ばかり行っていたので意外だったが、ポルトガルは首都のリスボンでも割とカードが使えない店が多い。前もってそこそこのお金を両替しておくのがいいかもしれない(ただスリもいるので、気をつけて)。
トラムや地下鉄などで使える旅行者向けの共通券も、小銭があると買いやすい。

この日はそのままホテルに戻ってバタンとベッドに横になった。
次の日に備えて体力を温存するに限る。
ホテルはメインストリートから一本入った通りにあるので、静かかと思いきや、深夜にトンカンどこかで工事の音がし始めた。
えー、なんなんだもう!
音がだだもれな耳栓を詰め込んで、私は枕に頭を押しつけた。


(つづく)