渚にて

旅行、音楽、読書、日常の雑記をつれづれに。

ペソアの憂鬱をかみしめて

EUフィルムデーズでポルトガル映画の上映があった。

その日の後半のトークには、この春に日本翻訳大賞に選ばれた『ガルヴェイアスの犬』(ジョゼ・ルイス・ペイショット)の翻訳家、木下眞穂さんもいらっしゃるということで、観に行くことにした。

上映作品は短編3作。

アナ・モレイラ『ウォーターパーク』、リカルド・レイテ『恐怖の装置』、そして見てみたかった『いかにしてフェルナンド・ペソーアはポルトガルを救ったか』だ。

 

フェルナンド・ペソアは、20世紀ポルトガルを代表する詩人であり、作家だ。

首都リスボンへ行けば、土産物屋のグッズに必ず彼の歩く姿が使われているほど有名な人物である。作品内容は全く異なるが、知名度夏目漱石みたいな感じ、というと分かりやすいかも知れない。

日本での知名度がどうかまでは私も不勉強なので分からないが、最近、『アナーキストの銀行家』(彩流社)が本邦初訳で出版され、SNSで話題を呼んでいた。そもそもポルトガル語は難しそうだという印象が強い。日本でポルトガル語というと大体ブラジルポルトガル語だし、そんな中でペソアの邦訳が出るということ自体、なかなか珍しいことなのだろう。とりわけペソアの言葉は複雑で大変そうだ。

 

映画『いかにしてフェルナンド・ペソーアはポルトガルを救ったか』は、ペソアが考案したコカ・コーラの宣伝コピーが検閲に引っかかり、以降約50年間ポルトガルコカ・コーラの輸入が禁止されたという史実に基づく皮肉なコメディーだ。ちなみに作品内ではコーラはコカ・ロカという名前になっている。

ペソアは『異名』という分身を使い、自分ではなくそれぞれの別人格として作品を書いた(『異名』は澤田直さんの『不穏の書』訳者あとがきによる)。映画にも登場する分身ーアルヴァロ・デ・カンポスはその一人で、コピーが思いつかず悩むペソアの前に現れ、彼にアイディアを授ける。

雇い主の受けも好評で、すぐさまコピーを載せたポスターが作られるのだが、検閲で「危険物」として扱われ、コカ・ロカは退廃的な飲み物として悪魔払いされてしまう…

 

 

続きを読む

ピッチ・パーフェクト/ガールズは諦めない

どん底のアカペラガールズグループがトップを目指す話、と聞いたら誰もがなんとなく「それ知ってる」と言うだろうし、きっとオチも想像がついてしまうことだろう。それでも私は映画『ピッチ・パーフェクト』を愛してやまない。
ピッチ・パーフェクト1』(米・2012)は、バーデン大のアカペラグループ、『バーデン・ベラーズ』が大会で大失敗をしたことから物語が始まる。ベラーズの評判はがた落ち、残されたメンバーは何が何でも新入部員をかき集めねばならなくなる。そこへやってきたのは作曲家志望で個人主義のベッカ(アナ・ケンドリック)、下ネタ好きで我が道を行く「太っちょ」エイミー(レベル・ウィルソン)、さらにビッチ、ゲイ、小声過ぎる不思議少女などなどスタイルも国籍もでこぼこの女の子たち。それぞれに才能はあるものの、旧態依然とした指導をするリーダー・オードリーについて行けず、チームはばらばらのままだった。
ベッカはオードリーに不満を抱きながらも、次第にベラーズのメンバーに心を許し始める。同級生でライバルのボーイズグループに入ったジェシーともいい感じに。けれども人間関係が苦手な彼女は、やがて大きな壁にぶつかってしまう。




ピッチ・パーフェクト1』はミュージカルコメディ映画であると同時に、青春映画の要素が強い。中盤からはあからさまに、80年代青春映画の名作『ブレックファスト・クラブ』(米・1985)へのオマージュが描かれる。この映画は、アメリカのスクールカーストを描いた映画だ。
高校の花形、不良、ガリ勉など個性がばらばらな5人のティーンが、ある理由からそれぞれ補講に参加しなければいけなくなり、顔を合わせた教室で初めてまともに会話をする。最初は警戒し合っていたものの、ほかに誰もいない中で、誰にも話せずにいた自分の内面について少しずつ打ち明け始めるのだ。


ピッチ・パーフェクト』でも個性が全く違うメンバーが集まり、激しくぶつかり合いながらもお互いを認めていく。今ではよくある話かもしれないが、そこに歌という要素が加わると途端にこの映画は輝き始める。
アカペラグループ最初のオーディションで、ベッカ演じるアナがカップを使いながら歌う『Cups』(When I'm gone)は話題になり、You tubeではさまざまな挑戦動画が見られるようになった。



I've got my ticket for the long way 'round
Two bottle whiskey for the way
And I sure would like some sweet company
And I'm leaving tomorrow. What'd you say?

When I'm gone, when I'm gone
You're gonna miss me when I'm gone
You're gonna miss me by my hair
You're gonna miss me everywhere, oh
You're gonna miss me when I'm gone

長い旅路のチケットと
ウィスキーを2本買った
あとは大好きな仲間がいてくれたらな
明日私は旅立つと知ったら、あなたはなんて言うだろう?

私が旅立ってしまったら
きっと寂しくなるよ 私がいなくなったら
私の髪を思い出したり
行く先々で私のことを思い出したりして
きっと寂しくなるんだから

ちなみにこの歌は2でも、卒業を控えたメンバーがたき火の前で歌い出したり、世界大会の冒頭ではベラーズがハンドクラップでカップの音を再現するという風に重要なシーンで使われている。

アカペラグループがそれぞれのテーマで歌い継いでバトルを繰り広げるリフ・オフもこの映画の見せ場の一つ。リフ・オフは見ていて本当に楽しい。一方で気になるのは「本当に役者たちは歌っているのか?」ということだ。全員かは怪しいところだが、もともと主役のアナ・ケンドリックジェシーを演じるスカイラー・アスティンはブロードウェイのミュージカルに出演しており、アナは98年に初出演の舞台でトニー賞にノミネートされている。(ちなみにスカイラーは1でベラーズのリーダーだったアンナ・キャンプと昨年結婚している)主要メンバーは歌っていることになるんじゃないかと思う。
★参考:町山智浩たまむすび『ピッチ・パーフェクト』抜き出し

ピッチ・パーフェクト2』(2015)は、大会のホスト役として出演もしているエリザベス・バンクスが監督となり、よりコメディー色が強まっている。前作のような丁寧なタッチではないが、私はこちらも好きだ。
前作で名誉を回復し、大会常連グループとなったはずのベラーズは、オバマ大統領夫妻(本物らしい)も見ている大舞台でもっとひどいへまを犯す。本作では、どぎついジョークを体を張って引き受ける「太っちょ」エイミーが第二の主役といって間違いないだろう。ベラーズは面目躍如のために初の世界大会優勝を目指すが、圧倒的な組織力を誇るドイツのグループを前に迷走。さらにリーダーになったベッカも将来に目が行きがちになり、メンバー間には亀裂が走ってしまう。

ピッチ・パーフェクト』のいいところは、自分にはないものが他者にあることを知って、相手を認めていくことだと思う。彼らは必ず挫折をするし、部活のほかにも恋人や叶えたい夢もある。それでも仲間を見放したりはしない。彼らにとって仲間は、きっとエンジンのようなものなんだろう。
2では新入生エミリー(ヘイリー・ステインフェルド)のエンディングでの笑顔に、この映画でやりたかったことの全てが込められている。私はなんだか昔自分がいた学生寮のことを思い出して、笑えるのにちょっと泣けてしまった。

2の最後に流れるのは、ベラーズでゲイのシンシアを演じるエスタ-・ディーンのCrazy  Youngsters。PVにはベラーズメンバーのアンナ・キャンプやブリタニー・スノウ、ドイツグループ『ダス・サウンド・マシーン』にいたフルラ・ボーグも出演している。ロンドン、サンフランシスコ、ベルリンと違う場所でそれぞれ音楽を楽しむ若者たちが出てくるのがすてき。大好きだ。


One day the world will be gone
There'll be no one here to walk the land
One day what you know will be wrong
There'll be no one here to hold your hand

Right now we're crazy youngsters
Time is running out, but who cares we're running free
They call us crazy youngsters
We don't apologize, we're mad and running free

They call us crazy youngsters
Time is running out but who cares we're running free
Hell yeah, we're crazy youngsters
We don't apologize, we're mad and running free

(Cause we got) Hey, we got a lot of things to do (Hey)
Hey, we got a lot of things to prove
(Yeah we got) Yeah we got a lot of room to grow
(Hey) Yeah we got a lot of miles to go
So we keep driving, we keep driving

One day when the story's all told
There'll be no more words to fill the page
One night when the stars are all gone
There'll be no more light to guide the way

Right now we're crazy youngsters
Time is running out, but who cares we're running free
They call us crazy youngsters
We don't apologize, we're mad and running free

They call us crazy youngsters
Time is running out but who cares we're running free
Hell yeah, we're crazy youngsters
We don't apologize, we're mad and running free

(Cause we got) Hey, we got a lot of things to do (Hey)
Hey, we got a lot of things to prove
(Yeah we got) Yeah we got a lot of room to grow (Oh grow)
(Hey) Yeah we got a lot of miles to go
So we keep driving, we keep driving

(Oh) We keep driving, we keep driving (driving, driving, hey)

And don't blink till its over (over)
The fun has just begun
Let's finish the race
While our hearts are young

(Cause we're) Cause we're crazy youngsters
Time is running out but who cares we're running free
Hell yeah we're crazy youngsters (crazy youngsters)
We don't apologize, we're mad and running free

(Cause we got) Hey, we got a lot of things to do (Hey)
Hey we got a lot of things to prove

ある日世界がなくなったら
地上を歩く人は誰もいなくなる
あなたの知っていたことが間違いだったら
手を取ってくれる人が誰もいなくなってしまう

私たちは愚かな若者
時は過ぎ去っていくのに 自由に走る私たちを誰が気にとめる?
誰かは私たちを愚かな若者だって言う
そんなのに謝りはしない、狂っていたって自由に走っていく

私たちにはたくさんやることがある
色んなことを試してみたい
広げたい部屋がたくさんある
何マイルだって進んでいく
走り続けて、ずっと走り続けていって

いつか全ては物語られる
ページを埋める言葉も尽き果てて
あらゆる星はいつかは消える
道しるべになる光さえ見えなくなって

私たちは愚かな若者
時間は過ぎていく、自由に走る私たちを誰が気にするだろう?
誰かは私たちを愚かな若者だって言う
そんなのに謝りはしない、狂ってたって自由に走って行く

終わるまで瞬きはしないでね
お楽しみは今始まったばかり
とっととレースを終わらせよう
ハートがまだ新鮮なうちに

私たちは愚かな若者
時は過ぎ去っていくのに 自由に走る私たちを誰が気にとめる?
私たちは馬鹿な若者
謝りはしない、狂ってたって自由に走って行く

だって私たちにはやりたいことがたくさんある
試したいことが山ほどあるんだ


(歌詞は意訳なので、ミスがあったらご指摘ください)
第3弾が今年公開らしいけれど、一体どんな話になるのか予告だけだと全く検討もつかない…




グランド・フィナーレ/されどそれも人生

グランド・フィナーレ(YOUTH) (2015/伊・仏・瑞・英)

世界的に名が知られた英国人の老音楽家フレッド(マイケル・ケイン)は引退を決め込んで俗世を離れ、セレブが集うアルプスの高級ホテルで無気力にバカンスを送っていた。
同じくホテルに滞在している親友で映画監督のミック(ハーヴェイ・カイテル)は、若手たちと新作の構想にいそしむ。ホテルにはロボット映画で知られたハリウッドスターのジミー(ポール・ダノ)らもいた。
ある日フレッドの元に、英国女王から勲章の授与と出演依頼が舞い込んでくる。
曲目はフレッドの名作『シンプル・ソング』。しかし、フレッドはかたくなに出演を拒むのだった。




美しい自然に囲まれた高級ホテルのスパには、老人から若者まで、さまざまな人が列をなす。
フレッドの老いた体と対局をなすミス・ユニバースのみずみずしい肌が印象的だ。
この作品には対比と同時に、いくつもの「繰り返し」が描写されている。
円環をなすホテルのライブシーン。機械的にプールへと進み、エレベーターで昇降する人々。途中までで止まってしまうヴァイオリンの音色。
彼らは一見毎日変わらないように見えるが、その実少しずつ変化している。
レストランにいた夫婦、ミックと会話するスパのスタッフ、役柄の選択肢を選ばずにいたジミー、いつも同じような構図で、同じ場所を歩いていたフレッドとミックにさえ変化が訪れる。
時はすべからく移りゆくものなのだ。

フレッドはかつて一緒にいた妻との幸せな追憶の中に閉じこもり、現実を直視することを放棄している。
しかし、ある出来事がフレッドの背中を押す。初めて彼が外へと歩き出す時、否応にも自らを取り巻く老いと死に向き合わざるを得ない。それでも生きる限り、人生は続いていく。
ある女優がミックに対して言った言葉通りに。

作品の原題は『Youth』。
映画を最後まで見れば、こちらのタイトルの方がすとんと胸に落ちるのは明らかだ。
グランド・フィナーレ』というと、「老音楽家が最後に華々しい舞台に立つ話かな」と思ってしまう。
しかし、この作品は実はフィナーレをも超えたその先を描いているのだ。
誰もが美しく華々しいフィナーレを迎えられるなら、どんなに幸せなことだろう。だが、人生はそんなに甘くはない。生きれば生きるだけ積み重なる苦しみがあることを忘れてはならない。
ただ、苦しみがあると言うことはおそらく喜びもあるのだろう。
終わってしまったはずの出来事にだって、新たな発見があるのかもしれない。
そんなささやかな希望を感じさせてくれる作品だ。

映像はひたすらに美しい。
明るいアルプスの自然はもちろん、フレッドが見る幻想、夜の照明を生かした宝石のような舞台、どれも美術館に飾っておきたくなってしまう。
監督のパオロ・ソレンティーノは『イル・ディーヴォ』『グレート・ビューティー/追憶のローマ』などの作品を生み出している。
タイトルだけ見るとこちらもずいぶんと年齢を重ねた人が撮っているように見えるが、彼はまだ46歳だ。タイトルで食わず嫌いしていたところがあるから、ぜひ追って見てみたい。
音楽はデヴィッド・ラング。
サントラも素晴らしいので音楽映画としても楽しめる。

カンヌプロモのマイケル・ケインと娘役のレイチェル・ワイズがすてき。やたらとセクシーなのはジェーン・フォンダ


*何もする気力がなくなり、久々に戻ってきましたがリハビリなのでお目汚しを失礼いたします。





ひと月の夏/この広い空の下で

■ひと月の夏(A Month In the Country)(英・1987)

1920年の夏、イングランド・ヨークシャーの田舎町にひとりの若者が降り立つ。
若者バーキンコリン・ファース)は、村の教会に描かれた中世の壁画の修復を任されていた。しかし彼は第一次世界大戦のパッシェンデール戦線でからくも生き延び、戦争の後遺症に苦しんでいたのだった。
教会の屋根裏に仮住まいをすることになったバーキンは、同じく戦争を経験し、教会脇で発掘作業にいそしむ男ムーン(ケネス・ブラナー)、好奇心旺盛な少女キャシー、そして教会の牧師キーチの美しい妻、アリス(ナターシャ・リチャードソン)たちと出会う。
壁画に込められた少しの謎と、夏の輝くばかりの自然と素朴な人々に囲まれるうち、バーキンの心は次第にほどけていく。




バーキンが土砂降りの中で村を訪れた翌日、屋根裏から外を見た彼は驚く。雨は上がり、地面は蒸気でけぶり、草は水滴に濡れきらきらと光る。空と草原は見渡す限り広がり、羊が呑気に歩いている。
バーキンは戦争の後遺症で吃音を発症している。駅長の娘キャシーは気にすることなく話しかけ、弟と一緒に母親から預かった食料と退屈しのぎに蓄音機を運んでくる。
彼と「隣人」となったムーンは、戦争の悲惨さを知るとは思えないほど、笑顔をたやさず気さくな男だ。バーキンはムーンのテントを訪れて、ティータイムをともにする。
村でもっとも堅苦しく退屈なのは教会の牧師キーチで、彼にはもったいないほどの美しい妻アリスにバーキンは心惹かれる。

原作者のJ.L.カーも言っているように、バーキンとアリスは確かに惹かれあっているにも関わらず、一定の距離を保ったままだ。触れ合ったところといえば、アリスが手ずから育てている白いバラをバーキンに折って差し出すシーンと、りんごを渡すシーンくらいか。
アリスは言葉にすらしないが、バーキンとともに村を飛び出したかったのかもしれない。バーキンも同じく、思いを胸に秘めたままだ。アリスからもらったバラをそっと自分の本の中にしのばせる場面がもどかしい。
小説ではキャシーの蓄音機で宗教曲が流されるが、映画ではWW1時のヒット曲Roses of Picardyを流す。バラに込めた彼らの気持ちを歌っているかのようだ。シナトラでも知られているようだが、色々なカバーがあるみたい。1917年のランバート・マーフィー版はこちら

Roses are shining in Picardy,
In the hush of the silver dew,
Roses are flow'ring in Picardy,
But there's never a rose like you!
And the roses will die with the summertime,
And our roads may be far apart,
But there's one rose that dies not in Picardy,
'Tis the rose that I keep in my heart

戦争の傷跡は、のどかな田舎町にも刻まれている。
バーキンが近郊の村へ説教の真似ごとをしに行く羽目になったとき、お礼にと呼ばれた家で、戦争で亡くなったその家の息子の写真を彼は目にする。彼は死の恐怖を思い出し、情緒不安定になる。教会まで走って行き、「神なんていない!!」と叫ぶバーキンが辛い。
一方のムーンも、決して戦争を忘れてはいなかった。後半で彼はバーキンに抑えていた心情を吐露する。教会の天国と地獄の壁画が彼らと重なって見える。地獄を体験してきた彼らは、もしかしたらずっと天国を探しているのかもしれない。
やがて彼らの仕事は終わり、生き生きとした夏も過ぎ去っていく。

原作にはない最後のシーンが好きだ。(*ネタバレです

村を去るバーキンは、老いた「今」のバーキンと視線を交わす。自らの「過去」となった教会に、老いたバーキンは再び足を踏み入れる。屋内には彼が復元した壁画が鮮やかに広がり、バーキンはかつてバラをしのばせたあの本を手にしている。彼の思い出の中で、オクスゴドビーのあの夏はきっと全く変わらずにそこにあるのだろう。


映画についての話。
コリン・ファースが26歳の時の作品。『アナザー・カントリー』から3年後に当たる。
監督は『スウィート・ノベンバー』のパット・オコーナー、音楽は『スノーマン』のハワード・ブレイク。
A Month in the Countryは元々テレビ映画用として検討されていたが、後に正式に映画化された。しかし低予算だったため、映画は約一カ月という短期間での撮影となった。
この撮影がむちゃくちゃ大変だったらしい。
主役の一人、ケネスに至っては2週間しか出演できず、夜には毎晩ロンドンのハマースミスで舞台に立っていたという。昼はムーン、夜はロミオ(『ロミオとジュリエット』)の二重生活だ。
作品の舞台はヨークシャーだが、実際のロケはバッキンガムシャーを中心に行われた。冒頭で機関車の着いた駅舎周辺はかろうじてノース・ヨークシャーのLevisham Railway Station。コリンのいた教会はRadnageのSt.Mary Churchだ。
コリンのインタビューにもあったが、夏の晴れ渡った田舎を映した作品にも関わらず、撮影時は大雨に見舞われていたそうだ。まさかと思うが、序盤の土砂降りはもしや本当の雨だったのかな?晴れ間を待って何とか撮影は続けられた。

■すべての参照リンク:wikipediaHelp this film!
(上右のサイトは20周年にリマスターDVD復活を希望して作られたサイト。本当に願ってやまない)

2010年にコリンと監督らとが作品について対談しています。
・Colin Firth, Kenith Trodd and Pat O'Connor talk about A Month in the Country 1/2

ちなみにこのフィルムは発表後長らく忘れられていたようで、熱心に探したワトキンスさんという人のおかげで2004年に何とか見つかったそう。
何と言うか、不運なのか幸運なのかよく分からない映画だ。
製作に関連した会社にもなく、監督やキャストのエージェントに問い合わせた結果、ケネス・ブラナーの秘書が手をまわしてくれ、なんとか倉庫で眠っていたフィルムを発見したらしい。さらにDVD制作をChannel4に訴えた結果、ようやく再発された。
とはいえ、DVDは今また廃盤になっているようだし、ファンサイトによると完全版は96分あったらしいが、ソフトに収録された映像は92分しかない。つまり4分は見ていない場面がある!
それにDVDの映像もお世辞にもそんなに高画質とはいえないのだ…。

この映画が大好きなファンはまだたくさんいると思う。
もうひと押しするならば、パブ?でケネスの話を聞いているときのコリンの顔が美しすぎて拝みたくなる。
願わくばブルーレイで、難しければDVDでもいいのでデジタルリマスタリングされた完全版で、あの美しい風景とコリンを見てみたい。
パッシェンデール戦線についても書きたかったけどさすがに長くなってきたので、次の機会に。

(続き)おまけのA.E.ハウスマンの詩について。


原作でバーキンは、思いを残した教会とオクスゴドビーを振り返り、19世紀の詩人A.E.ハウスマンを思う。ハウスマンはボーア戦争、WW1の時代を通じて次第に名が知られるようになったという。
ハウスマンの詩は序文にも掲げられている。

「ぼくは、ふと足をとめる、
別れにはまだ早い―
ぼくの手をとって聞かせてくれ、
きみの心の思いを」

J.L.カー/小野寺健訳「ひと月の夏」(白水Uブックス)より

バーキンの狂おしい気持ちが伝わってくるようだ。
調べたところ、ハウスマンの詩集"A Shropshire Lad"の一節のようだった。そっと載せておく。

XXXII. From far, from eve and morning

From far, from eve and morning
And yon twelve-winded sky,
The stuff of life to knit me
Blew hither: here am I.

Now-- for a breath I tarry
Nor yet disperse apart--
Take my hand quick and tell me,
What have you in your heart.

Speak now, and I will answer;
How shall I help you, say;
Ere to the wind's twelve quarters
I take my endless way.


シングルマン/触れるものはみな命に満ちあふれて

シングルマン(米・2009)

1962年、ロサンゼルス。

恋人のジム(マシュー・グード)を交通事故で失ったイギリス人の大学教授ジョージ(コリン・ファース)は、ある朝自殺を決意し、準備を整える。

用意した拳銃を鞄に潜め、一見普段と変わらない一日を過ごす彼に、生徒のケニー(ニコラス・ホルト)が声をかけてくる。
一日は少しずつ終わりへと近付いていくが、ジョージが目にする光景はどれも色鮮やかに息づくのだった。

youtu.be


  

ファッションデザイナー、トム・フォードが初監督を務めた作品。原作はイギリスの小説家クリストファー・イシャーウッド。
ジョージは16年もの間連れ添った恋人ジムを失って以来、喪失感に駆られている。

普段は家政婦が手伝いにくるほかは家では一人きりで、昔関係のあった親友チャーリー(ジュリアン・ムーア)を訪ねて会話を楽しんでいる。


彼の一日は至極規則的で、表情を抑えたまま何とかやり過ごしている。対照的にジョージの脳裏にフラッシュバックするジムとの思い出はどれもリラックスしたものばかりで、彼の置かれた孤独を鮮明にしている。


折しも世間はキューバ危機の話題でもちきりだ。

不穏な空気が漂い、人々はどこか落ち着かずにいる。死を決めたジョージは我関せず、自らに秘めた孤独にただ覆われている。しかしその悲愴な覚悟は、彼に意外な発見をもたらす。一分一秒、出会う人々がみな生き生きと輝いて見えるのだ。

死を前にして、生命の色彩に彼はうたれる。

一人の男が自殺を決意し淡々と一日を過ごしていくだけの話なのに、どうしても目が離せなかった。
コリン・ファース演じるジョージは、目に込められた感情がとても豊かだ。
ジョージは一人の時や親しい人の前以外では感情をあまり表ざたにしないが、彼の目を見ているとその胸のうちに秘めた苦しみや悲しさ、あるいは喜びが伝わってくる。
画面も美しい。ジョージがひとりで朝の準備をこなす場面、『サイコ』(よく考えたらこれも死の直前だ)の描かれた壁の前で行きずりの男と煙草を吸う場面、チャーリーと笑いながらダンスを踊る場面、後半に行くに従って画面はさまざまな色どりにあふれる。

メイキングのインタビューで、確かトム・フォードは「今を生きること」がこの映画のテーマだと語った。ジムとの過去に生きたジョージが全てを捨て去る決心をした日、彼はきっと「今」に気付いたのだろう。

今生きているものの美しさや力を感じること。その日その時を生きることの意味を恐らく彼は知った。
この物語は確かに悲しい話なのだろうが、ただ悲劇として片付ける気にはなれない。
生きることは無駄ではない。誰かと結びつく瞬間があるならば、その一瞬にさえ命は宿っている。

ジョージの家はガラス張りが印象的なモダンな建築だが、実際にロサンゼルスにある家らしい。フランク・ロイド・ライトの弟子、ジョン・ロートナーの設計だそうだ。
振り返って気付いたがジョージは序盤、よくガラス越しに何かを見ている(あるいは見られている)。

それはジムの記憶であったり、近所のクソ坊主であったりする。

彼がガラスを開けているのは、彼が窓を開け放しにしたままの車に戻ったとき、ニコラス・ホルト演じるケニーが駐車場で声を掛けてくるシーンだ。

その時ケニーは恐らく、ジョージの心に入り込んだのだろう。ガラス窓に隔たれていたジョージと彼を囲む「外(他者)」の世界は、少しずつ近づいていく。

正直な感想もいっとこう。
コリンが可愛かったです…(そこか)!!
トム・フォードがデザインした衣装はコリンとニコラス君ののみらしいけど、どちらもよく似合っていたなあ。特にジョージがきちんとアイロンをかけられたシャツを日数分用意して棚にしまってあるのが印象的で。

でも彼は「毎日こうしてジョージにならなければならない」とモノローグで呟いている。彼の今にも壊れそうな体裁を何とか取り繕っているのが、あの衣装なのだろう。

最後にあの服を脱ぎ去っていくのは象徴的な気がした。
とにかく私のツボにハマった映画で、すごく好きでした。音楽もよかったな…。

おまけ:トム・フォードインタビュー

 

Tom Ford on "A Single Man"

 

 

ニコラス・ホルトマシュー・グードのもあった!

A Single Man:Actor Colin Firth(2010)

 
本当にシングルマンのかよく分からないけどこっちのインタビューも後で見よう。
 
 

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール/彼らの行方不明の神様

■ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール(英・2014)

スコットランドグラスゴーのとある街はずれの病院。心を病んで個室に入院していた少女イヴは、退屈を紛らわすためにラジオを聴き、ひとり音楽を作って心を慰めていた。
ある日病院を飛び出して出かけたライブハウスで、イヴはギターを弾くジェームズと出会う。さらに彼の友達のキャシーとも知りあうことに。
どこかぱっとしない日々を過ごしていた三人は意気投合し、バンドを組むことにする。





「神様、彼女を助けてあげて」
イヴは自分で初めて作った歌をテープに吹き込み、自作のジャケットに"God help the girl"と書く。彼女は失恋の痛手が原因なのか、オーストラリアからはるばるやってきたグラスゴーで一人きりで入院生活を送っている。
彼女が出会うジェームズは眼鏡にひょろ長い体という、いかにも草食男子らしいスタイルで、彼曰く「チンピラの多い」この街では浮いていて居心地が悪そう。もともと彼はイングランド生活のほうが長かったのに、またこの街に戻ってきた「よそ者」でもある。キャシーはキャシーで、裕福そうな家の世間知らずなお嬢さん。彼らの運命的な出会いは、一気に音楽という表現へと向かっていく。

この初々しいミュージカル映画を監督したのはスチュアート・マードック
言わずと知られた、グラスゴーミュージックの筆頭格ベル・アンド・セバスチャンのフロントマンだ。恐らく彼の見た風景や心象、音楽がこの映画には大きく反映されている。
個室のベッドでラジオに耳を澄ませる少女、DJが話題にしているのはニック・ドレイク(!)、イヴが病院で挑戦する録音(しかもテープに)という、映画のあちこちに仕掛けられたネタに、気恥ずかしくなりながらも共感してしまう人は多いんじゃないだろうか。

病院では死んだように暮らしていたイヴが、外へ出て心を開けるのは歌を歌う時だ。
自分の思いをすぐに歌にできるイヴの才能と、彼女自身に魅了されたジェームズは、イヴへの思いを秘めながら同じアパートメントに暮らす。小悪魔みたいに可愛くて自分勝手で、それでもやはり孤独なイヴは、彼の前に現われては消えるまぼろしのようだ。
彼らの日々は駆け足で去っていく。
3人一緒だった足並みは次第にそれぞれの方向へとずれていき、心もすれ違う。
それは私がこれまで出会った、いろんなバンドと似ている。
一瞬泣けてきたのは、イヴが一人きりになって朦朧として見る夢に、3人でふざけ合いながら遊んだ記憶や幻覚?があふれだしてくるシーン。孤独に打ちひしがれながらも、友人や音楽と向きあった彼女の日々が確かにそこにあったと実感したからだ。

「神様、私を助けて」と願ったあとで、イヴはきっと絶望と希望を同時に味わった。
神様は外ではなく自分の中にいるもので、簡単に手を差し伸べてはくれない。それどころか、自分で立ちあがらないといけなくなる。
自分の内なる声が示したほうへ、彼らはそれぞれ進んでいく。彼らなりの歩幅で。


最後のジェームズの言葉が「ばかー!!」と思いながらも泣けた…。
この映画、製作を大手の映画会社に断られて資金集めが大変だったらしい。キックスターターで世界中から出資を募り、12万ドルを集めたとか。エンドロールで出資者の名前がずらりと並ぶ様をみて、いいなあ私も出資したかったなあと思ってしまった。


イヴを見ていたらベルセバのBeautifulという曲を思い出したのでそっと置いておく。




"Beautiful"

She lay in bed all night watching the colours change
She lay in bed all night watching the morning change
She lay in bed all night watching the morning change into green and gold

彼女はベッドで夜通し 色が変わるのを眺めてる
彼女はベッドで夜通し 朝へと移ろう様を眺めてる
彼女はベッドで夜通し 朝が緑や金色に彩られていくのを眺めてる

The doctor told her years ago that she was ill
The doctor told her years ago to take a pill
The doctor told her years ago that she'd go blind if she wasn't careful

医者は何年も前に 彼女が病気だと言った
「ピルを飲まなきゃいけません」
もう何年も前に
「気を付けないと目が見えなくなるよ」と

They let Lisa go blind
The world was at her feet and she was looking down
They let Lisa go blind
And everyone she knew thought she was beautiful
Only slightly mental
Beautiful, only temperamental
Beautiful, only slightly mental
Beautiful

彼らはリサを盲目にした
足元にある世界を彼女は見下ろしていた
彼らはリサを盲目にした
彼女の知り合いはみんな 彼女をきれいだと思った
ちょっと精神を病んでるだけで
きれいな子、神経質なだけ
きれいな子、ただちょっと病気なだけ
きれいな子

(以下略)



2014年に見た映画振り返り

明けましておめでとうございます。
年末に弾丸で香港に行って、観光がてら少しだけ映画のロケ地巡りなどをしてきました。
楽しかったけど人だらけだ…!と久々の大都会にびくびく。人混みが苦手な私はやはり荒野を歩いているほうが好きかも。
今年はもう少し肩の力を抜いていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

さて、昨年見た映画を振り返ってみました。映画館で観たのは25本、ソフトその他は55本でした(同じ映画あり)。
隠した部分にはソフトで見た作品をリストで並べています。

■劇場で見た作品(映画祭その他(過去作含む))

・大脱出
去年、新年一発目に見たのがこれだった。スタローン×シュワちゃんの二大巨頭が、超ハイテク・絶対脱出不可能な刑務所でタイトル通りのことをします。
いつまでも体を張っていけることやお約束の大切さを教わる作品(褒めてる)。しかしやっぱりこの重量級2体がぶつかり合うと、ダンプカーの衝突を見ているみたいで迫力があるよなあ。あと鬼畜所長役のジム・カヴィーゼルがキモかっこいいです。



マイティ・ソー ダーク・ワールド
大人気MARVELのヒーローものの続編。北欧神話をモデルにした、アスガードの神々が活躍するアメコミが原作です。『アベンジャーズ』でもお馴染みのソーが主役。
2時間ドラマとしかいえない前作同様、ストーリーはあってないようなものだけど、ファンにとっては待ちに待った作品といえる。とりわけオーディンの役が投げやりで、せっかくのアンソニー・ホプキンスの威厳はどこへ…。まあここのメインキャラクターは相変わらず可愛いし、トム・ヒドルストンが見られて嬉しかった。ストーリーももうちょっと頑張って欲しかったな。

・RUSH
前出マイティ・ソー2にも出演しているクリス・ヘムズワース主演。1976年F1のジェームス・ハントニキ・ラウダ、ライバル同士の二人の実話を元に描く。
役者が全員本物とそっくりで、キャスティングへのこだわりがうかがえる。クラッシュシーンも迫力満点。F1好きにも楽しめると思うが、逆に丁寧すぎる分盛り上がりに少し欠けて、ちょっと地味かもしれない。F1ってバリバリに華やかなスポーツだからなあ。

ホビット 竜に奪われた王国
トールキン原作『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚に当たる『ホビット』第2弾。アクロバティックなアクションシーンがわんさかでてきて、個人的には三部作のなかでは一番好きだな。でも、「そこで終わるのかよ!」という切なさも残る(大人の事情…)。皆大好きベネディクト・カンバーバッチの演じる竜、スマウグが出て来るよ!

・LIFE!
大好きだ!!!!
ベン・スティラー演じるしがない平社員が、めくるめく冒険の旅へと踏み出すファンタジックかつ壮大な物語。この映画のせいでまたアイスランドに行くことに。自分には何もないと思っている人にこそ見てもらいたい。

・クローズEXPLODE
なんだこりゃ!!!!
人気不良漫画『クローズ』の映画化シリーズは個人的に一作目が神であってそれ以降は…(しょんぼり)なんだが、一応見てみた。東出君演じる主人公の鏑木がもう少しキャラが立っていたらよかったんだけど、完全に脇役に持っていかれてました。それにしても開始5分で喧嘩がふっかけられる鈴蘭高校は恐ろしい。まだ校門に辿りついてさえいないぞ。

・新しき世界(×2)
今季韓国ノワール最大手。あらゆる人がこの新世界へと落ちていくのを目の当たりにして、そっと飛び込んでみた。魂まで持っていかれたわけではないが、主演のファン・ジョンミンと青い映像にしばらく取り憑かれた。韓国というとドラマくらいしか知らなかったのに、韓国映画、香港映画へと手を伸ばすきっかけになった。
韓国映画はまだ少ししか見ていないのだが、コメディーはあんなにコテコテに楽しいにもかかわらず、シリアスになると凄まじく救いがなくて、色んな意味で闇が深い…。

キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー
MARVELヒーロー映画続編。ヒーローとしてもてはやされたキャプテン・アメリカ=スティーブが一転、追われる立場に。彼の過去に因縁のある敵も現れ、壮絶な戦いが繰り広げられる。
マイティ・ソーに比べると段違いで出来が良い。エレベーター内のアクションシーン大好きファンにはたまらない!!

アナと雪の女王(×2)
死ぬほどヒットしたからもう何も言わなくてもいいと思うけど、好きだよ~。オラフ~!!

・ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
エドガー・ライト監督、サイモン・ペッグニック・フロスト出演の三部作コメディーの最終作。
昔馴染みが故郷に久々に集い、パブクロール(パブ巡り)をする…という一瞬青春ドラマのような始まりなのに、途中から「実は故郷にはとんでもない異変が起きていた!」とホラーSFへとコペルニクス的転回で大変身する。それでも最後まで死ぬ気でビールは飲んでやるぜ!!!
変わらざるを得ない大人になるまでの年月と、それでも変われない人間の悲哀。コメディーの中に織り交ぜられたこの強烈な切なさは、確かに「お別れ」を告げるには相応しい作品といえる。

・コールド・ウォー 香港警察2つの正義
香港映画のアクションをひっさしぶりに見た!楽しかった!!繁華街のテロと警察官拉致を巡り、警察内の対立、犯人との攻防がスリリングに描かれる。この映画に出て来るアーロン・クォックと珍しくインテリ役のラム・ガートンが最高に好みだし、警官同士が認め合う姿もぐっとくる。13年の香港電影金像奨を総なめにした作品。

グランド・ブダペスト・ホテル
クラシカルなホテルを舞台に、年若い従業員見習いと有能だが孤独なコンシェルジュが、老婦人の遺産を巡るドタバタに巻き込まれる。
物語は入れ子構造になっていて、現在、過去、さらに過去の人物が語る過去…と三段式に話が展開する。中心となっている物語を包み込むのは、ピンクとリボンとお菓子。ウェス・アンダーソン監督の作るこの世界はハマる人は相当ハマるだろうし、苦手な人はきっととことん苦手だろう。私は幸い前者だった。
この映画は、旅行先に向かう飛行機の行きと帰りで見て、帰国後翌日すぐに映画館に見に行ってしまった。可愛くて切ない、おとぎ話のような物語。まるで目の前で紙芝居や人形劇が繰り広げられるよう。でもきっとそれは誰かの、孤独だが時に愛のある人生の一ページなのだ。

・恋に落ちた男
『新しき世界』のファン・ジョンミン主演のメロドラマ。ヤクザ者の男が純粋な恋に生きようとするが…。メロドラマゆえに先の展開は見えているのだが、そのベタに悔しいがまた泣かされる。それにしてもどうしようもない男を演じるとこの人は最高だな。

超高速!参勤交代
時は8代将軍吉宗が治める江戸時代、舞台は気さくなお殿様がいる貧乏藩。悪い老中の策略により、「8日かかる参勤交代を5日でしろ!」とめちゃくちゃな命令を受けてしまう。殿以下選ばれし武士たちは知恵を絞り、参勤交代メロスとなり街道をひた走る!!
こんな時代劇を待っていた!!快哉を叫んだ。いわゆるチームもので、『八丁堀の七人』や『三匹が斬る!』あたりが好きな人にお薦めしたい。もちろん特撮ヒーローが好きな人にも。キャラクターが立っているので脇役に至るまで楽しく見ていられる。

・エレクション―黒社会
・エグザイル/絆
・毒戦
・名探偵ゴッド・アイ
以上ジョニー・トー監督作品のオールナイトでやっと気になっていた『毒戦』が見られた。巨大麻薬組織壊滅をもくろむ中国公安警察が潜入捜査に挑むが…。結論:壮大なルイクズ(ルイス・クーがクズ)

るろうに剣心 京都大火編
人気漫画映画化続編にしろ、こんなにエンタテイメントとしての進化型チャンバラ時代劇が見られるのは幸せなことだ。キャストも豪華だし(というかこれ…『龍馬伝』)、前作を超えた作品になっていて、制作陣の意欲のほどがうかがえる。
るろうに剣心 伝説の最期編
ちょっと前半がまだるっこしくて眠かったけど、後半の5人の戦いで全部チャラにしたい。志々雄さん、よかったなあ…。

・アバウト・タイム~愛おしい時間について~
ラブ・アクチュアリー』で知られるリチャード・カーティス監督最後の作品。しがない青年が、父親から一族の男の秘密である「自分の過去にタイムスリップできる能力」を使い、彼女を作ろうと奔走する。
序盤はよくあるラブコメだが、次第に「時間」そのものと人とのつながりを考えさせられるドラマへと変化していく。ビル・ナイ演じる主人公の父親はひょうひょうとしていてキュート。それゆえに…染みる。

・バルフィ!人生に唄えば
生まれつき耳が聞こえないが、常に明るい青年バルフィを軸に、彼をとりまく女性との壮大な恋模様をつづる。
ヒロインは2人。一人は裕福な夫を持つ美しいシュルティ。そしてさらに莫大な財産を持つ家に生まれながら、自閉症のため家族から相手にされず孤独に育ったジルミルだ。障害者を主役のど真ん中に据えた、こんなにもキラキラした物語を、不勉強ながらまだ日本であまり見たことがない。時間の長さを感じさせず、本当にキュートだった。ボリウッドは本当に元気だなあ。

ジャージー・ボーイズ 
60年代を中心に活躍した実在のバンド「フォー・シーズンズ」を元にした、トニー賞ミュージカルを、クリント・イーストウッド監督が映画化。
3時間近くあるが、時間を感じさせない軽快な作りで驚いた。バンドの一代記となると普通、どうしても息詰まる時期の描写があって見ているこっちまで苦しくなるものなのだが、それすら流れる音楽のようにさらりと見せてくれる。実際に舞台を踏んでいる俳優を主に据え、バンドの栄光と凋落、そして復活を春夏秋冬に合わせて見せているのも上手い。何より、オリジナルの歌の素晴らしさを余すところなく伝えている。見ていて幸せな映画だ。
全員が出て来るとってもミュージカルなエンディングが大好きだから貼るけど、これは映画を全部見た人にだけ見てほしいな。

インターステラー
父の愛は時空を超える。終焉を迎えようとしている近未来の地球。人類が移住できる惑星を探して、秘密裏に外宇宙へと向かう父親と、地上で父親の帰還を待つ娘(息子…いたっけそういえば)。
仕立てはハードSFだが、とっつきやすく色々とかいつまんである感じ。話は大風呂敷といわれるかもしれないが、私は好きだ。四角く何となくレトロなビジュアルのロボットTARSも可愛い。

・フランシス・ハ
27歳独身女フランシスの自意識過剰・止まらない止められない暴走マイウェイ。見ていてこんなに心臓がぼこぼこに痛くなるコメディ(コメディ…なのか?)もない!!!
モダンダンサーを目指しブルックリンで暮らすフランシスは、ある日同居していた大親友が彼氏と結婚することになり、家を追い出されるわ仕事もうまく行かないわの袋小路に追いつめられる。
見栄を張って何とか自分を貫こうとするほど意地になり、嘘に嘘を重ねてしまうフランシス…あれ、これは思い当たる節がありすぎるぞ。つらい。

ホビット 決戦のゆくえ
ホビット』三部作最終作。目覚めた竜スマウグははなれ山を飛び出し、湖の町を襲う。ドワーフの都エレボールへの道は開かれたが…。
前作からの竜のスマウグとの戦いが本作に持ち越しとなり、五軍の合戦を含め、クライマックスを二度、同じ作品の時間枠に収めることになってしまった。ぎゅう詰め感は否めないし、前作からのトーリンの性格の変化が早過ぎる。見せ場はあるけど、見せ場のオンパレードになってしまってもったいない。
ということで、途中の戦いから割と頭がついていけなかったんだけど(湖の町の総領の従者の出番は息抜きにしても、あんなに必要かなあ?)、最後のビルボとトーリン、それからビルボとガンダルフが並んでいる姿や、ビルボがホビット庄に戻ってくるシーンはやはり見られてよかった。

下はソフトやTV、飛行機で見た映画です。


■ソフトその他
・生き残るための3つの取引
・雲を抜けた月のように
・裏切りの陰謀
・フィスト・オブ・レジェンド
・チェイサー
オールド・ボーイ
・10人の泥棒たち
・ノーボーイズ・ノークライ
・怪しい彼女

台北の朝、ぼくは恋をする

香港国際警察
・エレクション―黒社会
・エレクション―死の報復
・暗戦 デッドエンド
・暗戦 リターンズ
・柔道龍虎房
・エグザイル/絆
・MAD探偵 7人の容疑者
・名探偵ゴッド・アイ
・PTU
天使の眼、野獣の街
・スリ
・ヒート・ガイズ 傷だらけの男たち

ゴジラ
ゴジラVSデストロイア
怪獣大戦争
ゴジラVSメカゴジラ
ゴジラ×メカゴジラ
ガメラ 大怪獣空中決戦
ガメラ2 レギオン襲来
ガメラ3 邪神(イリス)覚醒

・Her
・エージェント・ライアン
ロボコップ
グランド・ブダペスト・ホテル(×2)
・Songcatcher 歌追い人
・RED
・戦火の馬
ホワイトハウス・ダウン
・第九軍団のワシ
・デンジャラス・バディ
マリーゴールド・ホテルで会いましょう
プリティ・ヘレン
スプリング・ブレイカーズ
タイピスト
アンダーグラウンド
・あしたのパスタはアルデンテ
ソウル・キッチン
愛より強く
ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン
アパートの鍵貸します
お熱いのがお好き
紳士は金髪がお好き
北国の帝王
・2 States