渚にて

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Skyfallの追記メモ:トラファルガーのおふね

まだまだスカイフォール熱がさめやらない今日この頃。今は『カジノ・ロワイヤル』を見ている。エヴァ・グリーンが美しいよう…ダニエル・クレイグとの組み合わせだと一番好きかもしれない。
さて、今日はこの間のQとボンドの邂逅シーンの絵の追記です。

スカイフォール』で、Qが「スクラップになる寸前の軍艦ですね。あなたにはどう見える?」とボンドに尋ねる。ボンドは一言「ばかでかい船だな」と呟く。
このターナーの絵がトラファルガー海戦時の戦艦テメレーアだという話をしたけど、「実際どんな船だったのかな?」とある方に尋ねたところ、資料サイトを提示していただいた。さすが今海洋小説にはまってらっしゃるだけある(笑)!!!ありがたい!!以下にあげるのがそれです。
■英国海軍の艦船資料
18世紀舞台の英国海洋小説『ホーンブロワー』のファンサイト:『順風満帆』さまより
■戦艦テメレーア
帆船時代専門の海軍データサイト(英語):Three Decks-Warships in the Age of Sailさまより

さて、ここから下は素人が資料を見ながら考えただけのメモなので、ざっと流し見するだけにとどめて欲しい。間違いがあったらアドバイスを是非によろしく!


トラファルガーの海戦は1805年。この時代はフランスの皇帝ナポレオン全盛期で、いわゆるナポレオン戦争の一環にあたる戦いだ。ヨーロッパをほぼ手中に収めたナポレオンが、スペインとの連合艦隊を組みイギリスへと攻め寄る。舞台はスペインのトラファルガー岬沖。ネルソン提督率いる英国海軍がそれを迎え撃つ役割を担った。
イギリス側の艦隊はネルソンの乗る旗艦ヴィクトリー(砲門100、Captain Thomas Hardy)を筆頭に27、対するフランス・スペイン連合艦隊ヴィルヌーヴが指揮する33(参考:BBC)。数だけでいえば連合艦隊に分があるように思える。ちらっと見ただけだけど、この時代のフランス、陸地においてはほぼ無敵で恐ろしい。しかし海はというと、この時代の英国海軍に匹敵するものはいなかった。

テメレーアはSecond rate ship(二等級艦)。総重量は2120トンで長さは185フィート(約56.3m)、高さは205フィート(約62.5m)。戦列艦で砲門は98門だから二等級艦では最大規模で主力艦の一つ。配置はヴィクトリーの側。旗艦を守りつつ敵を破壊、みたいな感じですかね…(知識は全くないので妄想です)。確かにボンドの言う通りばかでかい船だ。1798年に進水、1838年に引退。トラファルガー時の艦長はSir Eliab Harvey。乗員はこの時720名ほど。同規模の二等級艦は4艘あった。
弾は近距離戦だとぶどう弾(Grape shot)が主体になるのかな?砲弾の中に小弾がいくつも詰め込まれていて、当たったときに威力が増す。

BBCのアニメーションマップが面白いよ!トラファルガーの海戦を動く図解で説明してくれる)

上の図解を参考にすると、当時一般的だったのは帆船と帆船が腹を向かい合わせながら戦う形やバックを先にとって攻撃する形。砲門は腹にあるから、前方攻撃には不向きだし。
ここでネルソンが選んだ戦法はネルソンタッチといわれる、敵の腹に真正面から突撃していくもの。Tの字型に見えるあれ。日本海海戦で東郷さんもやった「丁字(ていじ)戦法」という奴らしいよ。これらの情報をもとに当時を妄想で再現してみる。何度も言うが、妄想です。そして戦法についてはやっぱりよく分かっていません…。

1805年10月21日午前、風は弱々しい。
すでにフランス・スペイン連合艦隊は横並びで待ち構えているが、風上にあるはずの英国艦隊の歩みは遅く、じりじりとした時間がすぎた。少しずつ互いの船影が鮮明になってゆく。時ここに到って、ネルソンは信号旗で伝令を各艦に送った。
イングランドは各員がその義務を尽くすことを期待する」
英国艦隊はネルソン隊とコリンウッド隊に分かれ、二列になって連合艦隊へと垂直に攻め進んでいた。先に敵と接触したのはコリンウッド隊だ。敵の砲門がすかさず火を噴く。
それまで中心を目指していたネルソン隊は途中で急遽方向転換し、敵艦隊列の前方へと向かった。これはどうやら敵の目をそらす作戦だったらしい。ネルソンの乗るヴィクトリーはまたもや方向を転じ、いきなりフルスピードで中心部へ突っ込んできた。連合艦隊の激しい砲撃が浴びせられるが、ヴィクトリーの進撃は止まない。その火力は陸上の戦いを遥かに圧倒する。距離が詰まり悲鳴が聞こえた。
爆音がとどろき船の木片が弾丸のごとく船員たちの上に降り注ぐ。船の数は少ないが、英国海軍の動きは素早かった。煙の合間を縫ってすぐさま新たな砲弾が仏艦の腹にめり込んだ。先陣を切るヴィクトリー、そのすぐ後を追うテメレーア。各艦が重々しくぶつかり合い、不気味に軋みを上げる。連合艦隊の列が割れ、連携が崩れた。煙と火薬の臭いが辺りに立ちこめた。デッキに真新しい血がべたりとへばりついている。
それは地獄の様相だった。

連合艦隊の死傷者数、破壊された船の数が甚大だったのに比べ、英国艦隊は壊れはしたものの沈んだ船はなかった。海戦はイギリスの圧倒的な勝利で幕を閉じる(死傷者数、艦の被害数は記録によって揺れがあるので省く。頼りたくないwikiを頼るなら、英国海軍と連合艦隊の被害は死傷者数だけでも8倍相当の差がある)。
しかし英国海軍は彼らの心臓ともいえるネルソンをこの戦いで失った。彼の最期の言葉は「神よ、感謝します。私は義務を果たした」。

ネルソンを倒した狙撃手が乗っていた仏艦レドゥータブルは、テメレーアの攻撃で敗北したらしい。
スカイフォールとのこの符合はどうだろう?「彼女」の傷は一体どこにあったかな。もう一回くらい確認してみたいところ。

その他参考リンク(英語):
Daily Mail:HMS Indestructible: Unlocking the bloody history of the ship made famous by Turner, the Fighting Temeraire


National Geographic:Battle of Trafalgar

The Battle of Trafalgar