渚にて

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北欧ところどころ 3 フィヨルド巡り(From Bergen to Gudvangen,Norway)

■12,Sep,2012(3日目:ソグネフィヨルド巡り・ベルゲン→グドヴァンゲン)

前回まではこちら。
翌日ももちろん雨だったが、元々万年雨女の私にはもはや珍しい光景ではなかった。
今日は長丁場になるので、前日に街をぐるぐると歩いていた時、ショッピングモールのH&Mで靴下を調達し、そのついでに地下のスーパーで昼ごはん用にパンとバナナを買っておいた。

鉄道→バス→小さめのフェリーを乗りついで巡るこの観光には専用のナットシェル(周遊券)が作られていて、チケット一枚あればフリーパス状態でそれぞれの交通機関に乗ることができる。朝7時にスーツケースをフロントに預けて(荷物を別送してもらう手はずになっていた)、8時40分の電車に乗ることになっていた。ベルゲン駅は、観光地でもあるソグネフィヨルド周遊の玄関口である。
ここからほぼ半日でソグネフィヨルドを見て回れるため、そのまままたベルゲンへと戻ってくる観光客が多いが、私は翌日ストックホルムに行かないといけなかったので、そのままオスロへと下ることになっていた。

朝の空気は湿って冷たかった。
ベルゲン駅に改札はなく、ただホームが目の前に広がっている。すでにたくさんの観光客がベンチに座っていた。皆カラフルなレインウェアを着ている。同じ電車でフィヨルドを見に行くのだ。

風通しがよく寒いので、ホットコーヒーを売る若者たちが声をかけて来る

電車が入ってきた。今日は終着駅のオスロに着くのが夜の10時半だから、ほぼ12時間は移動し続けることになる。考えただけで身体が悲鳴を上げそうだったが、フィヨルドを見るのが一番の目的だったので、テンションは上がってきた。
座席について間もなく、マレーシア出身のおばあさん(今はオーストラリアにいるらしい)がまるで前からの知り合いだったように笑顔で「ここいい?」と隣に座ってきた。彼女はもう何週間も一人旅をしている最中なのだという。すごい。ロシアまで行ったと言っていただろうか。いきなりあれこれとしゃべっては、しきりに窓際を気にしている。どうやら窓側に行きたいようだ。
ちょっと悩んでから、「あの、ほかにもたくさん窓側の席はありますよ…」と言ったら、「そうね!」と勢いよく席を立って、また別の観光客に声をかけに行った。まるで大阪のおばはんみたいにアクティブであっけにとられた。
静かになった席で、私は白く細い滝がいくつも流れる丸い山々や、矢のように過ぎて行く家、線路のすぐそばにある川の黒い流れを眺めた。

ちなみにこの旅の直前からずっと日記をつけていた。こんな感じ。
電車やバスから見えた風景

一時間ほどしてヴォスに着く。ここからフェリー停泊場のあるグドヴァンゲン行きのバスに乗り換えだ。
ところでさっきのおばあさん、ジンピェンさんは私の横に座った時、同じ車両にやってきた日本の女の子に声をかけていた。「昨日、ベルゲンのフロイエンで一緒になったの」とやはりおばちゃんらしい気安さで紹介すると、私たちも笑いながら挨拶した。
彼女はYさんと言って、アジアでNGO活動をした後、勉強のためにロンドンの大学へ行っていたのだと言う。若々しいので年下かと思っていたら、実は年上でびっくりした。
「ちょうどそれが終わって、今は旅行の終盤なんだ」
ノルウェーの北端の街、トロムソにいる友人を訪ねてからオスロの方へと南下してきたそうだ。トロムソはオーロラが見られることで知られている。憧れの場所に「いいなあ!」と私は思わず叫んだ。
そんなわけで、一人旅で何となく意気投合した私たちはフィヨルド周遊の間一緒に旅をすることにした。彼女はベルゲンへと戻る半日コースなので、フェリーの後にはもうお別れになる。それでも、ずっと一人でいるよりは寂しくない。

バスはぐんぐんと山奥へ進んでいく。窓の外に見えるフォトスポットでは、わざとゆっくりと走ったり止まったりしてくれるので、皆そのたびにカメラを構える。

ひつじ
家の裏にいきなり滝


いろは坂みたいになってるカーブ!


まさしくmisty mountainという感じだが、こっちの山はなぜか切り立っておらず、頭が皆丸い。なんでだろう。まるで波に洗われた石みたいだ。
午前11時。グドヴァンゲンでバスを降りて、外の空気を胸一杯に吸う。小雨が顔に当たる。Yさんと交互に写真を撮りながら、「でっかいなー」と山を見上げた。
グドヴァンゲンの駐車場のすぐ裏も山


私たちが乗るフェリーは、フェリーというよりむしろ小型の観光船みたいなものだ。屋内に座席があるが、甲板や上のデッキに出て外の眺めを楽しむこともできる。夏はさぞかし気持ちがいいのだろう。しかし、9月の段階で最高気温はすでに12度という状態だ。ずっと外なんかにいたら風邪をひいてしまう。中で場所を確保した私たちはホットコーヒーを飲みながら、少しずつ交代で外の様子を見に行った。

間もなく昼に差し掛かったので、スーパーで買っておいたシナモンロールとバナナを食べる。Yさんが鞄の中から、「これ、オスロで買ったおかき!」とカレー味のおかきの袋を差し出してくれた。
「うわー!!!米菓だ!!米菓だ!!!」
「珍しくて買っちゃったんだよねー」
日本でもそんなに食べないくせに、何故か凄まじく興奮した私はおかきを分けてもらった。そういえば、Yさんもさっき電車でキャンディーを上げた時、「あー日本の飴だ!!」と歓声を上げていたっけ。おかきは、当たり前なんだけど米の味がしておいしくて、妙に感動した。
やっぱり腐っても日本人なんだなあ…。

売店にあった謎の食べ物Cold Cat。「冷たい猫」とははて、と思ってよく見たら、ホットドッグのサーモン版ぽかった。
フィヨルドの旅・船と鉄道編へ続く。