渚にて

旅行、音楽、読書、日常の雑記をつれづれに。

北欧ところどころ2 ベルゲン、雨の街(Norway,Bergen)

■11,Sep,2012(2日目:ベルゲン)

ベルゲンでは一日時間があったので、ガイドブックを見て街について勉強してから、翌朝外に出た。
目が覚めてまっさきに窓の外を確かめたけど、やっぱり雨はやまず、どんよりした雲が空を覆っていた。

夜着いた時は疲れ切っていたからあまりしっかりと見ていなかったが、宿泊先のホテルは1920年代に建てられたもので、朝食のために降りた一階でモダンな赤と黒の色合いに似合った重厚なつくりのホールに思わず見とれた。

典型的なホテルの朝ご飯。でも野菜もけっこうあったよ


ロビーのホール。ふおお
11時くらいに外に出たけれど、まだ街は目覚め切っていない。
人通りはまばらで、お店も少ししか開いていなかった。早朝の散歩みたいな気分でブリュッゲンがある港のほうを目指す。歩いても10分くらいですぐに着く。



港には魚市場がある。
夏には市場のテントが立ち並んでにぎやからしいけど、オフシーズンに入ってくると数はその半分以下のこじんまりとしたものになる。9月はちょうどそんな時期だった。いけすもそばにあって、あふれる水の中でカニがうごめいているのが見えた。近くにはテントではなく、アーケード状になった常設の市場兼店舗もあって、そこでもご飯を食べることもできる。

港を挟んで向かい側にあるブリュッゲンをひと巡りしてから、マーケットに戻ってご飯を食べた。メニューをあれこれと見定めながら、魚のスープと、グリルされたサーモンや野菜の盛り合わせを選ぶ。「あ、やらかした」と気づいたのは、思ったよりも高い値段で皿が手渡されたその時だ。小さめのサイズがよかったのに、店員さんは間違って大きめのサイズのグリルをよこしていた。すぐに突っ込めばよかったが、カードで払ったからなんとなく言い出せず、山盛りのイモを前に、私は「む、むりだ…」と思いながらいじいじとフォークを突き刺した。

むりだー!!!!ちなみに2500円以上する。もはやディナー


ベルゲンといえば世界遺産ブリュッゲンだそうだ(といっても、ここにあるのは初めて知った)。
中世のヨーロッパを海運で結んだハンザ同盟の事務所が置かれた場所がここにある。港に面して立ち並ぶ、木造の家屋がそれだ。かつてここは積荷の倉庫や商人の家だったという。
いまは通りに面した家屋はだいたい観光客向けのお土産屋さんになっていて、狭く入り組んだ小路を通って階段を上ると、二階はインテリア向けの事務所や工芸品の工房が点在している。


一階はお土産屋さんが多い

長い時間を経て、木造の建物が歪んだまま建っているのは驚きだ。その歪みは中に入ってみるとよく分かる。ブリュッゲンの入り口にはハンザ博物館があり、当時の趣を残したままの部屋に入ることができる。その二階に向かった瞬間、猛烈な眩暈が襲ってきた。床がかしいでいる。ビー玉を転がしたらどこまでも転がって行きそうだ。周囲を支える太い木枠も歪んでいる。昔遊園地にあった、マジックハウスを思い出した。裏道を見ると、建物を支えながら補強工事をしているのが見えたから、そうして保存をしているんだろうな。

二階はこんな感じ
マンホールも港っぽい

ここはブリュッゲン観光のメッカで、昼を過ぎるとたくさんの観光客が狭い通りを行き来しだした。見廻れば30分も経たずに終わってしまう場所だが、迷路みたいに入り組んだ建物群が面白くて、何度も回ってしまう。二階では観光客の子供がかくれんぼしていた。
雨は小雨が降り続いているが、たまに気まぐれに晴れた。もう一つの観光メッカ、ケーブルカーのあるフロイエン山には、とりあえず山の雲が晴れたら昇ろうと思った。



フィヨルドっぽいぎざぎざした感じの湾
というわけで、山登り。ケーブルカーはブリュッゲンそばに駅があって、そこから320メートルほどの
小高い山に登ることができる。ケーブルカーはいくつか途中に駅があり、業者っぽいひとが冷蔵庫か何かをホームに置いていたから、日常的にも小さな交通網として使われているのかもしれない。
頂上からは、ベルゲンの街が一望できる。疲れていた私も、この眺めには思わず嬉しくなって、展望台を走り出してしまった。空気はつめたい。日本なら冬の初めの気温だ。ダウンを着ていても、指の先から凍えて行く。
きっと晴れていたら遠い向こうまで見渡せるんだろうな。それでも雲にけぶる街は不思議に静かで、いくら見ても飽きなかった。

土産物屋にもいっぱいいる、ノルウェー名物のトロル。正直怖い。
頂上で風邪をひきそうになりながら何とか下界に帰還する。カフェであったまろうと、またラテを頼んだ。昨日から動きっぱなしで、運動不足気味の身体がずしりと重たい。目の前のテーブルで小さなキャンドルの火が揺れている。カフェの奥で、ギターを持った男の人が何かを弾いている。彼の背中の窓から光が差し始めた。カフェラテは人肌の温さで、甘い。

しばらくしたら青い空が見えた。初めての晴れに興奮する。すぐにまた雲がやってきて、雨が降ってきたけれど。この街では傘は手放せなさそうだ。



夕方までのろのろと歩きまわって、美術館のショップをひやかし、ホテル近くの図書館を覗いて(窓が大きくて、光が良く当たるすてきな作りだった)、ベルゲンの警察にときめいて(背が高くてかっこいい!)、またホテルに戻る。あちこち見たけれど、あまり夕食に食べたいものはなかった。量が多すぎると入らないし、いかんせん疲れすぎている。
ホテルのバーで貝が入ったスープを頼んで、あとは添え物のパンで胃袋を何とか満たした。スープはまあまあだけど、なぜかオリーブオイルとバジルががんがんに入っていてしょっぱかった。

ホテルの窓も雨模様